保険営業者のためのマーケティング&コンサルティング、ヒント集
 
 
 
 
 
 
 
 
 

保険営業者のための小さなヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【vol.054】 顧客開拓:顧客を交渉のテーブルに座らせる“技”を工夫しているか?
             

  中堅中小企業では、今もなお『社長様いらっしゃいますか?』という電話がかかって来ることがあります。電話口で担当者が『どちら様ですか?』と尋ねると、『○○保険です』と社名を答える…、それは、たぶん研修生なのでしょう。
  そして『ご用件は?』と聞くと、『○○保険の件でお話が…』などと非常に直接的に切り出されます。受付は『結構です』と応えて電話を切るでしょう。社長や上司には、あるいは所長や先生には“つなげられない”からです。
  ここで何が起きており、何が欠けているのでしょうか。そして“もっと効果的なアプローチ”はないのでしょうか。

             
   
    【01】 “交渉のテーブル”?
   
        政治や国際外交の世界で、交渉が始まることを“両者が交渉のテーブルに着く”と言われます。これから交渉をする“両者”が、まず“席につく”ことが何より必要になるわけです。そのため、交渉によって成果を得ようとするなら、当たり前のことですが、何より相手を“交渉のテーブル”に着かせることが肝要になるわけです。
  しかしビジネスの場合、しばしば相手を“交渉のテーブル”に着かせるステップを、省略してしまうことがあるのです。それは、特定の相手を交渉のテーブルに着かせるより、交渉しないでも、あるいは簡単な説明で“買ってくれる”顧客を探した方が早いケースがあるからです。
  どれもこれも“当たり前”のことのようですが、“当たり前”を正面から考え直してみると、時々、驚くような“発見”をすることがあります。今回も、そうなるかどうか、試してみましょう。
       
   
    【02】 セールス活動にとっての“交渉のテーブル”とは?
   
        さて、特に“セールス活動”にとっての“交渉のテーブル”とは何でしょうか。まず私たちが、たとえば“宝石の行商人”だったとして、2つのケースを比較してみましょう。一つは、淡いブルーに輝くサファイヤを掲げながら『いかがですか?』と、当たり構わず問うスタイル(Aさん)です。
  そしてもう一つは、脈と資金力がありそうな人を探しながら、『一度、私が持ち歩いている宝石を見に来ないか。次の金曜には大きな松の下に展示する』と言ってみるという(Bさん)スタイルです。余談ですが、その際には、およそ買いそうにないけれども好奇心の旺盛な人も誘う必要があります。“さくら”の役目を果たしてくれるからです。
       
   
    【03】 2つのケースを比べてみよう!
   
        商品をかざして大声で叫ぶAさんの“交渉テーブル”は、いったいどこにあるでしょうか。一見、どこにもないようですが、Aさんは『サファイヤという商品それ自体を交渉のテーブルにしている』とも言えるのです。客が『幾らだ?』と値段を聞くと、そこですぐに商談が始まるからです。
  生命保険にも、かつてそんなところがあったのではないでしょうか。保険の商品力や保険会社の信用力を見せつけて、興味を持つ顧客を辛抱強く探すという方式です。営業現場では、“ニードを持つ顧客を探せ”などという表現が使われていたかも知れません。
  そのため、特に保険会社の名前で電話をして来る研修生には、『保険のお話が…』とか『老後のお話を…』などと、直接的なものが多いのだと思います。そこでは商品や保険会社名が“交渉のテーブル”になるため、電話の主は名前も名乗らず、電話番号も非通知のまま『○○保険ですが…』と、語りかけて来ます。
       
   
    【04】 交渉テーブルの有無で“契約金額”さえ変わる?
   
        安価な保険を潜在客が沢山いる市場に持ち込むなら、AさんスタイルもOKだったでしょう。しかし、Aさん自身、『この方式でサファイヤを売るのはちょっと無理』だと感じているかも知れません。
  そのため、Bさん方式が気になるのです。とにもかくにも、“宝石はいかがですか”とは言わず、“展示会”を開くと言うからです。ここでは、宝石を売る前に“展示会”という“交渉のテーブル”が目に見えて存在しています。
  これも余談で、しかも不適切かも知れませんが、実際に30年ほど前の香港の宝石市場に行ったことがあります。そこで、売り手の希望価格の3分の1で買った宝石は、残念ながら、シンガポールのデパートの同等商品より高かったという記憶があるのです。
  交渉の場ができると、素人は売り手に翻弄されます。だから、もう、そんな危険な市場には行きたくなくなるのかも知れません。
       
   
    【05】 保険営業での“交渉のテーブル(面談機会)”形成
   
        しかし、価格を変えることができない保険には、売り手も買い手も、余計な心配をしなくて済みます。そこで、もしBさんが、宝石の行商を辞めて、生命保険販売に従事したら、真っ先に何をするかと考えてみたいわけです。さて、“商談のテーブル作り”が得意なBさんは、いったい何をするでしょうか。
  たとえば同じような電話をするとしても、最低限『資料を送るが、受け取りたいか』というワンクッションを置くでしょうが、たぶん、それだけではありません。今、二世帯住宅などの資料をインターネットで申し込むと、分厚い資料と追っかけ電話がやって来ます。ところが、そこには“Bさんならしないだろう”と感じるものがあるのです。
     
   
    【06】 “交渉テーブル(面談機会)”作りが上手な人は何をしているか?
   
        二世帯住宅の資料を送って来て、『詳しい説明をしたい』と言われると、顧客サイドでは“イエス”か“ノー”かのプレッシャーがかかります。Bさんが宝石商の時に、宝石の写真を見せ『どれか選んどいてください。後で詳しいご説明に伺います』と言って回るようなものです。そんなプレッシャーの中では、顧客は『ノー』と言いたくなるでしょう。
  そこで、たぶんBさんなら、『二世帯で生活する時の心得』のような“情報文書”を作るのではないかと思います。直接住宅の売り込みも説明もしていない“文書”ですが、そこには二世帯で暮らすメリットや問題、あるいは二世帯暮らしの事例などが掲載されています。そして、『あくまで住宅の内容には触れない』とも主張するはずです。
  それが“金曜日の夜の松の下での宝石展示”に似ているからです。
     
   
    【07】 実は“内容の工夫”が大事な“情報”発信
   
        二世帯の暮らし文書なら、顧客はその内容を“自由に批判”できます。あるいは気に入る事例に遭遇するかも知れません。今まで気付かなかったような課題も、顧客が自ら見つけるかも知れません。いずれにせよ、そこは『何を否定しても良い自由な場』なのです。
  しかし、そこで話が弾んで『やっぱり、二世帯で楽しく暮らすには、食事の場は分けた(分けない)方が良い』などというユーザーの声が届き得るのです。その時『この住宅なら、それがうまく実現できる』と、住宅の提案をすることができます。
  あるいは、“情報”を読むばかりで、一向に住宅検討に進まないユーザーには、『ああ、住宅サンプルがないからイメージが湧かないのかも知れませんね』と言いながら、住宅のプレゼンを始めるのも良いでしょう。ユーザーは既に、“情報を受け取る”というテーブルについています。
     
   
    【08】 交渉の場形成をイメージしてみよう!
   
        冒頭の電話でも『今、経営者やビジネスマンの皆様にお読みいただくためのレポートをお配りしているのですが、お送りしてもよいですか』という姿勢をとるなら、状況は変わって来るのではないかと考えられるのです。『また保険の売り込みか?』と聞かれるなら、『いいえ、私たちがたくさんの経営者やビジネスマンの皆様と接する中で、お教えいただいた貴重なお話を題材に、皆様に他山の石としてお伝えしたいもので、私達自身、勉強させられる内容です。サンプルを送りましょうか?』と問うてみればよいでしょう。
  その際の、言う側と聞く側のストレスを、売り込み電話のケースと比べてみてください。潜在顧客との接点が、ずいぶんと“普通の関係”に近い状態になっているのではないでしょうか。特に、保険のように、商品が“約束事の塊”のようなケースでは、この“普通に話せる関係”こそが、最もピカピカ光る“交渉のテーブル”かも知れないのです。
  納得すれば大金でも支払う人は、豊かになった日本社会では、決して少なくありません。
     
   
    【09】 保険営業の“交渉のテーブル”とは…
   
        保険のパンフレットは、保険に興味を持たせるツールです。提案書は交渉のテーブルで使うツールです。必要なのは、交渉のテーブル自体に興味を抱かせるツールなのです。
  では、顧客が興味をいだくべき“交渉のテーブル”とは、保険営業の場合、いったい何なのでしょうか。結論を急ぐなら、それは“保険営業者の見識”のようなものだと言えるかも知れません。しかも、それは“学者のような見識”ではなく、ユーザーが『この営業者は自分と同じような経営者やビジネスマンのことを、よく理解している人だ』と感じる見識なのです。
  自分たちのことをよく知っている人とは話がしてみたいでしょうし、保険を勧められても、“普通の商談”に進む程度の信用は持つでしょう。そんな“目に見えない交渉のテーブル”を用意するために必要なものが“発信情報”であって、それは“売り込み”以前の段階で勝負を掛けるものなのです。そして、以前は“保険会社名の名刺”が交渉の疑似テーブルを形成していたのでしょう。
 しかし今や確かに、“交渉のテーブル”を形成する努力をしないまま、Aさんのように大声で叫んでも、複雑な思いだけが残ってしまいかねない情勢なのかも知れません。
       
     
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