保険営業者のためのマーケティング&コンサルティング、ヒント集
 
 
 
 
 
 
 
 
 

保険営業者のための小さなヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.030】トーク磨き:保険は“もういらない”などと言わせないトーク(1)
             

  最近では、大手を含む様々なメディアで“(生命)保険に貯蓄機能は必要ない”とか、“一生涯の保障は必要ない”などという“話題”が飛び交っています。
  保険も、まさに“一般的な商品購入視点”のように、目的を絞った安いものの方が良いということなのでしょうか。しかし、そもそも“保険の目的”は何なのかと改めて考え直した時、“一見立派な見解”にも、一部危険性が潜んでいることが分かります。
  ただ、それは従来の“営業トーク”の因果応報的結果だと考えるなら、今後の“トーク”のあり方の“方向性”を考え直す好材料だと言えるのかも知れません。


             
   
    【01】 暗黙のうちに広がった“概念”?
   
        1990年代の後半のことだったでしょうか。筆者と取引のあった企業の社長が『いやあ、倍になっちゃった』と喜んでおられたことがありました。10年前に入った養老生命保険の満期金が、支払保険料の“2倍”になって戻ってきたということです。
  今では投資商品でも、“倍”になる案件は珍しいでしょう。しかし、もちろんそれは“生命保険”本来の目的ではありません。しかし、当時は“個人には運用益”、“法人には節税益”として、まるで“投資の勧め”のような形で、生命保険が提案されることが少なくなかったと思います。
  同時に、生命保険はファイナンシャル・プランナーが売る商品だという“概念”までも、暗黙に広げられた形跡もあるのではないでしょうか。しかし、今、その反動が来ているとは思いませんか。
       
   
    【02】 気にかけられることが少ない生命保険の“本来”の目的
   
        法人の“節税”に関しては、単なる“勘違い”か計算ミスに過ぎないとも言えますから、国税庁に叱られるのは当然でしょうが、“お得な生命保険”というコンセプトは、確かに“現実感”を持つ時期もあったためか、なかなか売り手と買い手の“頭”を離れてくれないのではないでしょうか。
  そして、生命保険の“現実的な目的”が忘れられているのです。今でも『生命保険の目的は?』と聞かれて、正確に答えられるユーザーは、どれくらいいるのでしょう。確かに『そんなことは分かっている。生命保険の“本来の目的”は死亡保障だろう』と言われるかも知れません。そして、営業者の皆様方の中にも、『だから今、死亡保障を前面に出した営業トークをしている』という声も、しばしば聞かれるようになりました。
  しかし、それは本当に“リスク・マネジメント”としての生命保険の目的なのでしょうか。
       
   
    【03】 “生命保険の目的=死亡保障”って本当?
   
        少なくとも、“生命保険の目的=死亡保障”と考えてしまうと、定期生命保険以外の生命保険に“存在価値”を感じなくなります。そして、自然な成り行きとして、生命保険は団体保険や定期生命保険に“安く”入って、貯蓄は別途考えよう、と言う話にも“説得力を感じる”のです。
  しかし、そもそも“保険のリスク対応機能”は、どこにあるのでしょうか。話を分かりやすくするために、たとえば“ペットボトルの飲料水”で考えてみましょう。飲料水は普段も飲みますが、災害時に断水になった時には、なければ命にもかかわりかねない“貴重な緊急物資”でもあります。しかも、東日本大震災直後には、西日本でも“品薄”になるほどの“モノ”でもあるのです。
  緊急時にあわてて手当をするのではなく、“普段”から備えておこうという考え方も分かります。
       
   
    【04】 “取り置き”こそがリスク対策
   
        しかし、ペットボトルには、緊急用も日常用も区別がありませんから、両方を同じ場所で保管すると、ややこしくなるでしょう。もちろん、きちんと“在庫管理”ができる“ホーム・マネジメント”の達人ならいざ知らず、緊急用にとっておいた水を、日常で飲んでしまうことも少ないとは言えません。
  そこで、緊急用のペットボトルを、日常飲むボトルとは“異なる場所に取り置きをする”必要性が生まれます。置き場を変えるわけです。そして、この“取り置き”という行為が、まさに日常的な水に緊急対応性を与える“リスク対策行為”に他ならないわけです。
  リスク対策には、予防や緊急時の行動プランなど、様々な分野がありますが、“取り置き”タイプの対策も、重要な一つの手段なのです。
       
   
    【05】 リスク対策でなくとも“取り置く”のが生活の智恵
   
        もちろん“リスク対策”などと大きな話をしなくても、たとえば6本のペットボトルがあるなら、『これは今日の分、これは明日分…』などと“分類”して、今日必要でない分は“取り置き”するのが普通でしょう。決して、今日の分以外のボトルのフタをとったりはしません。
  “お金”も同じです。自己資金を企業会計のように、きちんとマネジメントできる達人ならいざ知らず、そうでなければ、お金も飲料水のように“取り置き”しておかなければ、いざと言う時困ります。たとえば『これは結婚資金、これは来年の旅行の資金、これはマイホームの資金…』などと、“お金に用途別の札”を下げて、置き場を変えておかないと、いつの間にか使ってしまう危険があるということです。
  そんな大きな話ではなくても、夕食のためにとっておくべき“一万円札”を、午後3時に“雑貨”などに使ってしまったら、夜、何も食べられなくなります。私たちは、無意識でも“お金の取り置き”をしているのです。もちろん、それができないために自己破産する人はいるのですが…。
       
   
    【06】 保険は“お金を取り置く”一つの選択肢だと考えると…
   
        水やお金のように、貴重なものは“区別して取り置きする”のが、私たちの基本的生活感覚ですし、それが特に“緊急時に備える”という目的を伴うと“リスク対策”になるということです。
  こんな風に頭を整理をしておくと、ずいぶん考えやすくなるのではないでしょうか。たとえば『“お金を取り置き”する方法はたくさんある。その中で生命保険は、どのように活用されるべきだろう』などと考えることができるからです。
  貯蓄か保険かタンス預金か…、ではありません。“区分して取り置き”するために、どの手段を選ぶかと、とてもスマートにかつ現実的に考えられるのではないかということです。そして、その時、やや不謹慎に聞こえる部分には目をつむっていただきたいのですが、『銀行に預けると利子がある。しかし、生命保険を契約すると被保険者の死亡時には、支払い保険料以上の資金が入る。さて、被保険者死亡という“区分”で考えると、どこに“取り置き”すべきか』という思考になるわけです。
       
   
    【07】 “取り置き場”に心まで置き忘れないために…
   
        保険の目的は、生命保険も含め、個人や法人に、この“取り置きの選択肢の一つ”を提供するものです。しかも、お金に関する限り、“取り置き”の選択肢はそんなに多くありません。株式や金、投資信託や不動産も、確かに“お金の居場所の選択肢”にはなるのですが、投機的要素が強くなる分野では、“お金”をそっと置いておくよりも、日々あるいは毎時チェックできるような場に置かなければならなくなります。
  人によっては、そんな“投機の置き場”に、自分の“心”まで置いてきてしまうケースがあるのではないでしょうか。もちろん、個人の価値観にもよりますが、豊かであるはずの“人の心”が、お金の番ですり減ったのでは、悔やみきれないモノを人生に残してしまうかも知れません。
       
   
    【08】 今改めて必要になった“取り置き”意識!
   
        あいまいな言い方ではありましたが、『保険はお得、保険は必要、保険は愛、保険は安心…』と、こう言って良ければ“青筋”を立てて話す時より、『お金には置き場が大事ですよね。その置き場から保険を外すって、なぜ?、せっかくこんな風に素敵な置き場なのに…』というスタンスでアプローチした方が、現代感覚に合うと申し上げたいのです。
  “お得”で売った反動で、“損”だから売れない…、そんな保険市場の中で、少し視野を広くとると、ずいぶんと違う流れで“保険を語る”ことができます。しかし、それ以上に、これからの保険ユーザーには、この“お金の取り置き”という発想が非常に重要になるのです。しかも、それは“将来”のためではなく、まさに“目前の今”のためなのです。
  さて、続きは次回、ご一緒に考えておきましょう。
       
       
      ヒント集一覧へ
             
           
 
     
     
Copyright(C) CIBE Editorial Institute, Ltd. All Rights Reserved.