保険営業者のためのマーケティング&コンサルティング、ヒント集
 
 
 
 
 
 
 
 
 

保険営業者のための小さなヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.029】総合戦略:“強み”形成視点が根本的に“ズレ”ていないか?(1)
             

  保険営業者として“存在感”を出したいと考えるのは、昨今のような逆風下では当然のことかも知れません。“独自性”を感じさせる何かがないと、顧客が振り向いてくれないばかりではなく、他者保険と“競争”になった時、勝てないこともあるからです。
  そこで“競争力”や“強み”の形成が課題になるのですが、では“競争力”とか“強み”と呼ばれるものは、いったい“どんなもの”なのでしょうか。その“本姿”を取り違えると、悩みや努力が、良い実を結ばなくなるかも知れないのです…。


             
   
    【01】 乗合代理店は本当に強いのか?
   
        たとえば“乗合代理店”となって、ありとあらゆる“保険”を品揃えをしたら、それで“強み”を発揮したことになるでしょうか。『そもそも複数の保険会社の商品を持っていなければ、顧客は話さえ聞いてくれない』という指摘もあります。
  また“乗合”ができないポジションにある場合は、他の営業者から“抜きん出た”存在になるための“独自性”が重要だと感じられるかも知れません。“独自性”がなければ、顧客がわざわざ『自分(営業者)の話を聞く理由がない』とさえ感じるからです。
  しかし、本当にそうなのでしょうか。そこで“保険の特質”という原点に立ち返りながら、保険営業で持つべき“強み”の“本姿”について考えてみたいと思うのです。
       
   
    【02】 複数の保険会社と提携しても“品揃え”にはなっていない?
   
        “品揃え”が豊富ならば集客が容易、というのは確かにマーケティングの基本原則です。そのため、特に店舗営業などでは“品揃え”に血道を上げます。そんな“基本原則”が、保険営業界にも押し寄せ、“品揃え=乗合代理店”が重要な戦略の一つになったのかも知れません。
  もちろん“乗合”を否定するつもりは全くありませんが、ここで大事なことは、本当に“乗合=品揃え”なのかという基本的な疑問なのです。他業界でのマーケティング理論が保険営業界で通用するとは限りません。
  結論を急ぐなら、乗合による保険商品の品揃えは、八百屋が多品種の野菜や果物を揃えるより、むしろたとえば“きゅうり”に特化して、その“きゅうり”を産地ごとに徹底して仕入れるようなケースに似ていないでしょうか。保険営業では、商品は皆“保険”だからです。
       
   
    【03】 “きゅうり”専門店になっても意味はない!
   
        九州産のきゅうり、四国産、京都産、千葉産に宮城産…、あちこちの“きゅうり”が揃うと、確かに“一味違った売り手”になります。最初は“話題性”も手伝って、客が興味を持つかも知れません。そして『この時期には四国産が一番だよ』などと言えるため、専門性も増したように感じやすいのです。
  八百屋なら、そんな奇抜さで“集客”して、他の商品を売ることができます。きゅうりを買う人は、トマトやキャベツも買って帰るからです。しかし店全体で“きゅうり”に特化してしまったら、どんなに地域別に仕入れをする“技能”を高めても、報われそうにありません。客は“きゅうり”しか買えないからです。
  それどころか、きゅうり専門店では、四国産のきゅうりが“一番”と言ってしまうと、今度は宮城産を売る口上を作れません。せっかく仕入れた“四国産以外のきゅうり”は売れなくなるでしょう。
       
   
    【04】 “疑わずに”生きた人々と“疑って”生きた層
   
        そこで“きゅうり専門店”店主は、『店頭に並べるきゅうりは、一種類か二種類にしよう。全国各地から“きゅうり”を仕入れるというのは、“仕入れ力と目利き力”のシンボル(ブランド)にして、店で売る商品は絞り込もう』という考え方に落ち着いて行きます。
  “乗合代理店”の現実がここにあるのではないでしょうか。もちろん、生命保険はA社、医療保険はB社、損害保険はC社というように、複数の会社から“メイン商品”を選べるという点では、乗合の効果は絶大なのですが、それは“多種目販売の仕組みやノウハウが出来上がった”時のメリットでしょう。そうでなければ、結局“単品売り”の営業姿勢と何ら変わらないことになってしまいます。
  今日の顧客は、それを見抜きます。こう言って良ければ、“肩書きを持った人を疑わずに済んだ”時代に生きた高齢者が、なかなか“振り込め詐欺”のウソを見抜けないのと正反対に、“人を疑う”ことに慣れた世代には、体裁ではなく実質を見る人が増えているのです。保険営業が“変わる”必要があるのは、“人を疑う”ことに慣れた層に、保険を売らなければならないからです。
       
   
    【05】 一般論を忘れて素朴に“強み”を考えよう!
   
        繰り返しますが、“乗合代理店を批判”したいのではありません。“乗合代理店”の戦略を例にして、“一般のマーケティング理論をそのまま導入する”危険を指摘しているのです。たとえば、地域ナンバーワンの営業者になると、顧客が“尊敬のまなざしで営業者を見る”ようになる、というのは、同じ保険業界でも、たぶん“アメリカ”での話でしょう。
  日本では、アメリカのように“ナンバー2以下は敗者”などという発想はありませんし、成功者を無条件で尊敬する風土もありません。今まで、ナンバーワン営業者が“強かった”のは、むしろ保険会社が“スーパースターを育てよう”として、優秀な営業者に“肩入れ”をしてきたからなのではないでしょうきあ。
  保険会社が“営業戦略”を見直し始めた昨今、ナンバーワンという絶対的な“強み”にも、疑念が湧いてくるのです。
       
   
    【06】 今日的な“強みの本姿”が見えてくる…
   
        では、今後の保険営業が持つべき“強みの本姿”はどこにあるのでしょうか。それは“一つの自問”をしてみるだけで、少し見え始めます。それは保険の品揃え戦略に関し、『うちは、あらゆる保険会社と代理店契約をしているから、あなたにピッタリの保険が提案できる』という言い方に対し、では『わたしは現代のビジネスマンにピッタリの保険を提案するために、最も適切だと感じた保険会社の保険提供に徹することにした』という言い回しは、どのように“違うか”という問いです。
  たぶん『そんなには違わない』のではないでしょうか。実際に、乗合代理店でも、生保営業職員でも、提案する保険を絞り込んでいるとしたら、顧客にとっては“大差”はないと言えそうなのです。
  “体制”や“ブランド”、あるいは“業績”や“有名度”を頼りにしても、競争相手に『ああ、私には何もありません。ついつい、お客様のことを第一に考えてしまうため、結局は“業績”を挙げられないこともあるのです。でも、この仕事が好きで、お客様のお役に立ちたいから、私はこのやり方で満足です』と言われたら、“いい勝負”になってしまうでしょう。
       
   
    【07】 同業者との勝負ではなく“顧客との格闘”
   
        つまり、保険営業での“強み”は、他の営業者との“比較”の中で生まれるものではなく、顧客を相手に“鋭く斬り込める”アプローチ力にあるのです。それは即ち、同業者との競争力ではなく、顧客との格闘力にこそ“強み”の根源が見えてくるということです。何をするか、どんな体制をとるかではなく、“顧客に鋭く斬り込む智恵”こそが、“強みの本姿”だと申し上げたいと思います。
  “業績”を上げれば、保険会社が支社を挙げてサポートしてくれるために、営業はやりやすくなるでしょうが、それは“内向きの強み”の成果に過ぎず、重要ではあっても、“一人ぽつんと放置された時の強み”ではありません。
  そして徐々に、“一人で放置されてもなんとか売って来る営業者の方が費用対効果でも将来性の上でも一枚上手ではないか”と保険会社が考えるようになれば、再び保険営業界でも“内向き”と“外向き”の強みが“一致”するようになるのでしょう。
       
   
    【08】 具体的には“次回”!
   
        では、“顧客に鋭く斬り込む智恵”とはどのようなものなのでしょうか。それは、長らく“保険業界”が忘れている世界にあります。そして“商品が売れるためにはユーザーがニーズを持っていなければならない”という一般的なマーケティング理論が“及ばない”ところにあるのです。
  具体的には、次回、ご一緒に考えて行きましょう。
       
       
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