保険営業者のためのマーケティング&コンサルティング、ヒント集
 
 
 
 
 
 
 
 
 

保険営業者のための小さなヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.018】顧客分析:客探しに行き詰まったら探し出すべき“賢者の意志”(1/2)
             

  保険営業で探し出すべきは、“賢者の石”ではなく“賢者の意志”、または“健者の意志”です。“賢者の石”は、まさに“あやゆるものを黄金に変える”魔法の石ですが、“賢者の意志”にも、そんな不思議な側面があります。
  そして、その不思議な部分が、割合“保険”となじみ深いのです。

             
   
    【01】 そこに○○があるから…?
   
        1923年のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、イギリス人の“ジョージ・マロリー”という人が、『なぜエベレストに登るのか?』と聞かれ、『そこに山があるから登るのだ』と答えた話は有名です。最近では、話題にされることも少なくなりましたが、昭和の中期では、『そこに○○があるから…』という言い回しが流行したものです。
  たとえば、『どうしてそんなに飲むの?』と家族に叱られて、『そこに(酒の)ボトルがあるからだ』などと答えたということです。そして、それは“理由なき行動”などとも言われましたが、マロリー氏が、なぜ“そんな返答”をしたのかを“正面から考える”機会は、意外に少なかったかも知れません。
       
   
    【02】 マロリー氏発言の真意?
   
        このイギリス人が、新聞記者に答えた真意は、『そこに山があるから…』ではなく、多分『私はエベレストに登りたい(登ろうとする意志がある)から登るのであり、決して、登ったら何か得をするという打算で登るのではない』と言いたかったのでしょう。
  功利主義、打算主義全盛の当時のアメリカで、打算に振り回されず、自分の意志を押し通した“イギリス人”の心意気だったのでしょうか。そして、多くの人が、だんだん功利主義に飽きてきた昨今、私たちの周囲にも“マロリー”が増えてきているのです。この“変化”を見逃すべきではありません。
       
   
    【03】 広がりを見せるマロリー的発想
   
        たとえば、ある地域で“民生委員”として、高齢者宅の訪問を重ねるA氏には、打算的な計算はありません。『この地域にお世話になったから、恩返しがしたい』などという取引感覚もないのです。ただ、A氏は『自分に何ができるかと考え、民生委員ならできると思って始めた』と言います。
  道端に花を植え、道行く人を楽しませているBさんは、やはり質問に対し『なぜ?、理由なんか考えたこともない』と言われます。私たちは、頭で考えた理屈をつけて行動する時には、損得を考えます。頭、つまり“思考”は、ほとんど常に打算的なのです。
  そして、そんな“打算”は、理由なき行動を認めません。A氏が民生委員の活動に熱心なのは、それが名誉になるからだとか、Bさんが道に花を植えるのは自己満足を得るためだとか、様々な“打算的理由”をつけてみたくなるのです。
       
   
    【04】 それは“意志エネルギー”
   
        しかし、私たちの行動には、決して“打算”では説明がつかない部分があります。まさに“そこに山があり、高齢者がおり、道がある”からそうするのだとしか“説明”できないものがあるのです。そして、それが実は、私たちの“意志”なのでしょう。
  意志に打算はありません。唯一、行動に理由があるとしたら、『そうしたいからそうする』のです。理由もなく、また損得も計算せずに行動することを“愚か”だとさえ見る功利主義の中で、しばらく忘れ去られていた『理由はないけど、そうしたいからそうする』という私たちの“意志”が、徐々に復活、復権してきているのが、最近の状況かも知れません。
       
   
    【05】 保険営業にも影響し始めた!
   
        そのため『保険は得ですよ』とか、『保険で損をさせません』などと言わなくても、『私にできることは何かと考えたら、家族のために生命保険に入ることだと気付いた』という動機で、保険に入る人がいるのでしょう。
  これからは、発展途上国の子供のために、国際的な慈善事業団体を受取人にして生命保険に入るという人も、保険会社が契約条件を変えるなら増えるはずです。“なぜ?”と聞いても理由はありません。理由を説明できないのが、私たちの心の中にある“意志”というエネルギーだからです。
       
   
    【06】 “打算発想”だけでは市場全部を見たことにならない!
   
        そんな“捉えどころがないもの…”と言われるかも知れませんが、人間というものが、そもそも捉えどころのないものでしょう。だから、今後は“打算”ではなく、“意志”に働きかけた方が保険が売れるよ、という打算的な話をしたいわけではありません。
  終身生命保険を販売しない保険会社も出るほど長期金利が下がり、生命保険の“お得感”がなくなってしまう環境は、打算人間ではなく“意志の人”を見付けやすいのではないかと申し上げているわけです。それは同時に、“打算”ではなく“意志”で保険に入る人を見失ってはいないかという指摘でもあります。
       
   
    【07】 打算と意志は複雑に共存?
   
        もちろん、打算的な人と意志の人が、明確に分かれているわけではありません。私たちは、常に、幾分打算的で、幾分意志的でしょう。そして、今まで、物質的な豊かさを求める風潮の中で、打算的な要素が勝ち、その後、物質だけでは必ずしも豊かにはなれないという気付きの中で、打算的な発想が後退していると、考えるべきなのかも知れません。
  そんな中で、もし皆様が『保険にお得感がなくなったから売れない』と考えてしまうなら、保険ユーザーの人間性、つまり打算と意志の両方を持っている現実を見失うことになります。あるいは、皆様方ご自身の意志、つまり『別に保険営業が得だから取り組んでいるわけではない。必要な人に必要な保険を届けるために営業しているのだ』という感覚を、見失うことになるかも知れません。
       
   
    【08】 “精神訓”から“方法論”へ…
   
        そんな“精神訓”が今、必要なの?、と問われると、『もしかしたら、一番必要かも知れない』と、お答えせざるを得ません。なぜなら、今、営業マインドが本当に冷え込み、売り手の意気消沈が買い手に伝染して、保険市場が冷え込むという現象さえ見えることがあるからです。
  経済活動も、“人が行う”ものですから、全て“掟(おきて)”があるわけではなく、やってみなければ分からないことも少なくないのです。ただ、“意志に働きかける”には、どうすればよいのでしょうか。特に、“賢者の意志”を探す方法を、次回、ご一緒に考えてみましょう。
   
       
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