保険営業者のためのマーケティング&コンサルティング、ヒント集
 
 
 
 
 
 
 
 
 

保険営業者のための小さなヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.017】顧客分析:足しげく“通う”営業者と“通われる”顧客の本音(1/2)
             

  “営業の基本”は、足しげく通うことだとされた時期がありました。それも、相当長い期間、その考え方は指示されていたように思います。
  昨今の“通信時代”に入り、その基本は『今も変わらない』と言う人と、『もう変わった』と指摘する人がいるようです。本当のところは、いったいどちらなのでしょうか。そして、今後の“顧客訪問”について、どのような心づもりが必要なのでしょうか。2回シリーズで、ご一緒に考えてみましょう。

             
   
    【01】 顧客の顔が見えないとやりにくい?
   
        保険業界ではありませんが、ある業界で自社商品の“プロモーション(販促)ビデオ”を作るお手伝いをしたことがあります。お手伝いと言っても、話す内容まで作るわけですから、役者を使ってプロモーションビデオを作るのと大して変わりません。
  ところが、その時に商品説明者として登場してもらった営業者Aさんは、『やりにくい』と言うのです。いったい何がやりにくいのかと聞いてみると、『目の前に人がおらず、カメラだけの状態で話すのは、話しにくい』というわけです。そこで、実際にセミナーを開き、その様子を撮影することで、プロモーションビデオにすることにしました。
  カメラの前では緊張し切っていたAさんが、セミナー会場では生き生きとしています。結果として、よい映像が撮れました。
       
   
    【02】 顧客の顔を見て“不安”解消
   
        『顧客の顔を見ながら話をしないと不安を感じる』という営業者は、Aさんばかりではありません。筆者のマンションで、以前管理を委託していた会社の担当者もそうでした。とにかく、会いに来るのです。ある日、電話で話をした日の夕方に、突然会いに来たので、『どうした?』と聞くと、『すみません、今度の会議の会場の住所を教えてください』と言うのです。
  『近所まで来たので寄った』と言うのですが、さすがにその時は頭に来て、『そんな用事は電話で済ませろ』と叱ってしまいました。しかし、その後、その営業者の“本音”に思いが至ってしまいます。
       
   
    【03】 面談は“腹の探り合い”か?
   
        その時、筆者は、その管理会社との契約を破棄して、新しい会社を探す腹積もりをしていました。それを敏感に、担当者は読みとったのでしょう。そして、そんなに敏感であるが故に、できるだけ“会った”上で、様子を探りたいのだと思います。そのため、電話で済む用事でも、“訪問の理由”に使うのでしょう。
  一方、筆者は、時間をとられるのが嫌だと言うより、“探られる”のがうっとうしくてしかたありませんでした。しかも、探っているのが分かるため、だんだん腹が立ってくるのです。そして『勝負するなら、腹ではなくサービス内容でやってみろ』などと突然言い放って、担当者に驚かれてしまうわけです。『どうして突然、そんな話になるのですか…』と。
  考えてみれば『今、君が腹の中で私を探っていたから、その反撃をしたまでだ』などと言うのも奇妙な話なので言いません。そのため、筆者はしばしば『突然奇妙なことを言い出す人間』だとされているようなのです。
       
   
    【04】 見えてきた2つの“本音”
   
        筆者の風評がどうであれ、ここに2つの“本音”が見えます。1つは、営業担当者の本音で、客が何を考えているか“不安”で、だから“会って探りたい”という思いです。もう1つは、客の本音で、まさに“腹の内を探られたくない”という思いなのです。
  “足しげく通う”ことが、重要な意味を持つのは、こんな状況でしょう。つまり、電話やメール等の通信では確認できない顧客の本音が感じられ、その本音が、どうも“ネガティブ”なものの時です。そして、問題にすべきは、顧客が“ネガティブな本音を隠そうとしている”ように感じる時、足しげく通う手法が効果的かどうかということだと思います。
       
   
    【05】 面と向かっては断りにくい?
   
        それは対象が“既契約者”である場合に限りません。たとえば、純新規先でも、『ああ、複数に相談して“相見積もり”を出しているな。そして、どうも、第一候補は自分ではないな』と、営業者が感じる時、足しげく通うべきかどうかという問題でもあるわけです。 さて、答はどうなるでしょうか。
  答を考える前に、もう1つ押さえておくべきポイントがあります。それは『顧客は面と向かって、ノーとは言いにくいものだ。だからお断りは手紙やメールで行う人が多い。そのため、どんどん会いに行って親しくなると、断りにくくなって成約確率が上がる』という指摘を、どう捉えるかです。
  両者は微妙に違いますが、同じ“根”を持つテーマです。その“根”とは、『面と向かってネガティブなことは言いにくい』という人の性質に着目するからです。
       
   
    【06】 アメリカ人もそうなのだけど…
   
        ただ『ああ、やっぱり“ノー”と言えない日本人だからね』とは言わないでください。筆者にも、短いながらアメリカの東海岸に住んだ経験がありますが、彼らも“ネガティブな話”を相手にどう伝えるかを、盛んに他者に相談しますし、『きちんと“ノー”と言おう!』と仲間に呼びかけます。
  これは筆者の個人的見解ですが、アメリカでは“あまり親しくない相手”“利害関係の薄い先”には、無遠慮にかつ偉そうに“ノー”と言っても許される文化があるようです。しかし、決して“親しい先”や“利害関係の濃い先”に対して、イエスとノーがはっきりしているとは思えません。
  他の国は違うのかも知れませんが、ここでは“日本人”特有の問題をテーマにしているのではないと申し上げておきたかったのです。
       
   
    【07】 圧力を掛けられて育つ“憎しみ”
   
        さて、本題に戻りましょう。『面と向かってネガティブなことは言いにくい』ため、面談をして圧力をかけるのには、確かに効果があります。それは、皆様もよくご存じでしょう。しかし、これはもろ刃の剣で、深刻な欠点も生み出します。それは『憎まれる』という現実です。
  人は誰でも、他者の圧力に屈すると、表面的には従順でも、心の中に深い憎しみを残します。そして、その憎しみは“復讐の時”を虎視眈々と狙うのです。かつて、“L型保険つぶし”が、特に経営者を顧客として、流行り病のように蔓延した背景には、足しげく通われて圧力を感じた“顧客の嫌悪”が一気に爆発したのかも知れません。
  そうでなければ『先々保険料が上がるなんて知らなかった』などと、“私は契約内容も確認できない愚か者です”と言わんばかりの発言を、経営者がするでしょうか…。
       
   
    【08】 “憎しみ”が大きな問題にならなかった時期もあった!
   
        ただ、次々に顧客候補が現れ得た時期には、多少顧客を怒らせても、たくさんの契約をとることが重要でした。ある会社では、右肩上がりの時代に『一部の客を怒らせても客は無限にいる』という経営理念?で、大成功を収め、株式を上場しました。ところが、その経営者は、右肩下がりの時期に、銀行から派遣された社外役員に、役員会で解任されています。
  そんな情勢の変化を捉えながら、足しげく通う効果と必要性を、改めて考え直してみると、次回にお話しするような“答”が見えるのではないかと思うのです。
   
     
       
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